
不動産を売却する際には、仲介手数料・印紙税・登記費用・税金など、さまざまな費用がかかります。
費用の種類や金額を理解せずに手続きを進めてしまうと、思わぬ出費が発生し資金計画に影響する可能性があります。安心して売却を進めるためには、事前に必要な費用を把握し、売却価格から手取り額を正確にイメージすることが大切です。
そこでこの記事では、不動産売却にかかる費用のタイミングや一覧、金額のシミュレーション、さらに費用を抑える方法まで解説します。これから売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
不動産売却では、売却前・契約時・売却後と段階ごとに費用が発生します。
ここでは、それぞれのタイミングで必要となる費用の種類と特徴を解説します。
不動産を売却する際は、契約に入る前の準備段階で発生する費用を把握しておくことが大切です。事前に必要な出費を見込んでおけば、資金不足や売却計画の変更を避けられます。
主な費用には次のようなものがあります。
特に昔から存在する不動産は境界があいまいで、測量図も存在しないことが少なくありません。また相続した空家などは管理が行き届いていないケースも散見されます。
買主に安心感を与えたり、正確に検討して頂くためにも、必要に応じて事前に整備しておくことが売却成功の鍵となります。
準備段階での費用は物件の状況によって異なりますが、早めに見積もりを取り、必要性を判断することが重要です。
不動産の売買契約や決済時には、法律や登記に関わる費用が必ず発生します。これらを把握していないと、契約時に予想外の出費に戸惑うことになります。
代表的な費用としては以下のとおりです。
さらに、住宅ローン残債がある場合、金融機関やローン商品によっては繰上返済に伴う事務手数料もかかることがあります。
契約や決済の場面は多くの手続きが同時に進むため、余裕を持って資金を準備しておくことが安心につながります。
※参照:国税庁|不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
不動産を売却した後には、税金や確定申告に関連する費用が発生します。事前に把握していないと、予想以上に資金が目減りする恐れがあります。
代表的な費用は以下のとおりです。
譲渡所得税・住民税は、売却価格から取得費や仲介手数料などを差し引いた額に課税されます。居住用不動産の場合は「3,000万円特別控除」や「所有期間10年以上の軽減税率」などの特例を利用でき、大きな節税効果が見込めます。
一方、事業用物件では居住用の特例は使えず、買換え特例など別の制度が中心です。農地の場合は納税猶予制度が設けられていますが、売却先や利用目的によって適用が変わる点に注意が必要です。
もし売却によって譲渡益が発生する場合には、所得に応じて増減する医療負担割合や各種公的保険料等が増加することがあります。
売却後に発生する税金や諸費用を理解し、適切に控除や特例を活用することが、手元資金を確保するための重要なポイントです。
不動産売却には複数の費用がかかります。ここでは代表的な6つの項目を取り上げ、それぞれの内容と注意点を解説します。
不動産売却で必ず発生するのが仲介手数料です。これは不動産会社に支払う成功報酬であり、宅建業法で上限が定められています。売主が不当に高額な請求を受けないようにするための仕組みです。
仲介手数料の上限は売買価格に応じて次のようになります。
| 売買価格 | 仲介手数料の上限(税抜) |
| 800万円超 | 取引額×3%+6万円 |
| 800万円以下(低廉な土地・建物の特例) | 30万円が上限 |
たとえば3,000万円で売却する場合は「最大96万円+消費税」となります。支払い方法は契約時と引渡時に分けて支払うケースもありますが、多くは決済時に一括で支払います。
また、2024年に見直された「低廉な土地・建物の特例」は、地方の空き家や小規模土地の売買で活用される制度です。報酬が極端に低くならないように30万円を上限とすることで、不動産会社が積極的に取り扱いやすくなっています。
仲介手数料は大きな出費に感じますが、契約の安全性や適正な価格での売却を実現するために不可欠な費用です。
※参照:国土交通省|空き家等に係る媒介報酬規制の見直し
売買契約書を作成する際には、国税である印紙税を納める必要があります。
| 記載された契約金額 | 税率 |
| 10万円を超え、50万円以下のもの | 200円 |
| 50万円を超え、100万円以下のもの | 500円 |
| 100万円を超え、500万円以下のもの | 1千円 |
| 500万円を超え、1,000万円以下のもの | 5千円 |
| 1,000万円を超え、5,000万円以下のもの | 1万円 |
| 5,000万円を超え、1億万円以下のもの | 3万円 |
| 1億万円を超え、5億万円以下のもの | 6万円 |
| 5億万円を超え、10億万円以下のもの | 16万円 |
| 10億万円を超え、50億万円以下のもの | 32万円 |
| 50億万円を超えるもの | 48万円 |
※引用:国税庁|No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
売買契約書は法的効力を持つ「課税文書」に該当するため、契約金額に応じて税額が定められています。納付方法は契約書に収入印紙を貼り、割印することで完了します。
近年は電子契約の普及により、印紙税が不要となるケースも増えています。紙か電子かでコストが変わるため、売主は契約方法を事前に確認しておくことが大切です。
印紙税そのものは大きな負担ではありませんが、準備不足を防ぐためにも理解しておくと安心です。
不動産を売却する際には、登記に関わる費用が発生します。これは法務局での登記手続きや司法書士への依頼にかかる費用であり、買主が安心して権利を取得できるよう、不動産の権利関係を正しく整理するために必要です。
代表的な登記と費用の目安は以下のとおりです。
| 登記の種類 | 登録免許税(税額の目安) | 司法書士報酬の目安 |
| 抵当権抹消登記 | 不動産1件につき1,000円 | 2〜3万円 |
| 相続登記 | 固定資産評価額の0.4% | 5〜10万円以上 |
| 住所変更登記 | 不動産1件につき1,000円 | 1〜2万円 |
住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消登記が必須であり、相続登記や住所変更登記が未了の場合も、売却前に完了させる必要があります。これらを怠ると、引渡しが遅れるだけでなく契約違反とみなされる恐れがあります。
登記費用は軽視できないため、早めに司法書士へ相談し、必要な手続きと費用の見積もりを確認しておくことが安心につながります。
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所有期間によって税率が変わります。代表的な税率の内訳は以下のとおりです。

※参照:国税庁|No.3211 短期譲渡所得の税額の計算
※参照:国税庁|No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
不動産を取得後5年以内に売却すると、売却益に対して約40%の高税率が適用されますが、6年以上所有すれば約20%まで下がります。さらにマイホームを売却する場合は、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例や、その所有期間が10年を超えている場合には軽減税率の適用もあり、課税額を大幅に減らせます。控除を受けるには翌年の確定申告が必要です。
このように、所有期間の長さと特例の有無が税額に直結するため、売却時期や条件を見極めることが重要です。
※参照:国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
※参照:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
住宅ローンが残っている場合は売却時に完済が条件となるため、返済関連費用が発生します。代表的な費用は以下のとおりです。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
| 繰上返済手数料 | 1〜3万円程度 | 金融機関により異なる (ネット銀行は割安傾向) |
| 抵当権抹消に関わる事務手数料 | 1〜3万円程度 | 銀行や司法書士への手数料 |
売却代金で一括返済するのが一般的ですが、残債が売却価格を上回るオーバーローンの場合は、追加資金の準備が必要です。
資金計画の際には必ず確認しておくべき費用です。
物件の状況によっては、売却に追加費用が発生することがあります。
必ずしも全員に必要ではありませんが、発生すると大きな負担になる場合があります。
代表的な費用の目安は以下のとおりです。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
| 解体費用 | 木造住宅で150〜300万円程度 | 建物の構造・延床面積、作業環境などで変動 |
| 残置物処分費 | 数十万円程度 | 家具・家電・生活用品の処分 |
| 引越し費用 | 10〜50万円程度 | 仮住まいが必要な場合は家賃・敷金礼金も追加 |
特に相続物件では家財が多く残っていることがあり、処分に時間と費用がかかるケースが目立ちます。こうした費用は事前に見積もりを取り、売却価格と合わせて資金計画に組み込んでおくことが大切です。